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イニエスタを育てた名指導者アルベルト・ベナイヘス氏。 ヴィッセル神戸への加入前は、ドミニカ共和国で指導していた!

年に一度の桜の見頃が終わりへと近づいている2019年4月下旬の日本列島。今年は例年と少し様子が違う。国民が桜よりも関心を寄せているのは、2019年4月30日の天皇陛下の退位であろう。長い日本の歴史を紐解くと、天皇の生前退位はそれほど珍しいことではないらしい。645年の「大化の改新」直後の皇極天皇がその先駆けで、1817年の光格天皇がその最後の天皇だとされており、その間も、歴代の多くの天皇が生前退位されてきたというのだ。とは言え、人生100年ばかりしかない我々現代人にとっては、初めて目の当たりにする出来事であり、悼む心ではなくポジティブな気持ちで迎えられる初めての新元号に、文字通り、どこか新しい時代の幕開けを予感させられる。

日本国民が今、ワクワクした気持ちで新時代を待ち構えるこの感覚。それに近しいものを昨年、日本サッカー界、そしてサッカーファンが感じたであろう出来事が思い出される。Jリーグのヴィッセル神戸に“あの”スペインの至宝、アンドレス・イニエスタが加入したのだ。その他、世界的ビッグネームが次々とJリーグに参戦。イニエスタと同じく元スペイン代表のフェルナンド・トーレスとダビド・ビジャ、元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキーらだ。もちろん、Jリーグにはこれまで幾多の外国人選手が招かれ活躍してきた。しかし、ここまでの世界的スーパースターが幾人も一堂に会しJリーグでプレーすることになるのは初めてかもしれない。今季から外国籍選手の登録が無制限となったことと相まって、日本のサッカー界が新たなステージに突入したことを感じさせられる。

しかし、サッカー界隈の人々がワクワクしている原因はこれだけに留まらない。Jリーグが世界のトップリーグと肩を並べられる日が来るかもしれない。そう思わせるサプライズ人事があったのだ。イニエスタの恩師でもあり、数々の世界的なスター選手を育て上げた超有名指導者、アルベルト・ベナイヘス氏がヴィッセル神戸に招かれることとなったのだ。今回、このベナイヘス氏を紹介したく筆を執った。(日本では彼の苗字をベナイジェスと表記するメディアが多いが、ここではスペイン語読みにあわせた表記に統一する。)

しかしここで疑問を持つ読者も多いだろう。ドミニカ共和国を紹介するウェブサイトで、なぜ彼の紹介をするのか。来日前、ベナイヘス氏が指導していた国。そう、それがドミニカ共和国なのだ。ドミニカ共和国第二の都市、サンティアゴ・デ・ロス・カバジェーロスのサッカークラブ『シバオFC(Cibao FC)』で2015年から指導し、ドミニカサッカー界のレベルアップを図る原動力となった。いわば、我々のベナイヘス氏を日本に取られた、と思っているドミニカ共和国のサッカー関係者も多いはずだ。そんな世界的な有名指導者であるベナイヘス氏。まずは、ベナイヘス氏が何者なのか、彼の来日を実現させたイニエスタに言及しながら紹介していく。

2019年現在、サッカーにおける世界最高峰のリーグというと、イタリアのセリエA、イングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、そしてスペインのラ・リーガが有名であるが、その中でも、リオネル・メッシを擁するスペインの強豪クラブ、FCバルセロナ(通称バルサ)が世界でもトップクラスの強さと人気を誇る。そんなバルサの黄金時代を支えてきた一人が、イニエスタだ。バルサのトップチームで約17年に渡り活躍。スペイン代表としても長年活躍してきた選手だ。小柄な体格であり、足がとびきり早いというわけでもない。しかし、抜群の状況判断能力と一つ一つのプレーのスキルに富み、メンタルも強い。プレースタイルはそのポジション柄決して派手ではないが、サッカー通を唸らせる職人気質のそのプレースタイルに、日本にもファンは多い。『さくら』で一世を風靡した歌手の森山直太朗氏も、おそらくそのファンの一人であろう。2012年発売のアルバムの収録曲『そしてイニエスタ』を是非聴いていただきたい。バルサのチームメンバーについて語られていく歌詞には、かなりクスッとさせられる。その歌詞のサビの部分に来ると、彼はイニエスタをこう表現する。「白い小さいマタドール」と。

世界中で愛され、尊敬されるイニエスタを世界レベルにまで育て上げた指導者。それこそが、ベナイヘス氏である。スペイン人の両親の元、メキシコで生まれ、幼少期を過ごす。スペインのプロサッカー選手であった父の影響でサッカーを始めるが、自身のプレーに限界を感じ、指導者を志すこととなる。家族とスペインに戻り指導者の資格を取得後、指導者人生をスタート。身体能力よりも、プレーの質を上げるのに必要な技術や知性を重要視するベナイヘス氏のイズム、そしてそれを元にした指導法を携え、地元の学校やチームで地道に活動していたところ、それがバルサの目に留まり、1991〜2012年の20年以上に渡って、同クラブ経営のユーストレーニングアカデミー『ラ・マシーア(La Masia)』での若手選手の育成を任されることとなる。10〜19歳の選手達が在籍するこのアカデミーは、今では世界的に有名なアカデミーに成長。その年の最優秀選手を決めるFIFAバロンドールという名誉ある賞において、2010年の最終候補者3名に名を連ねたイニエスタ、メッシ、シャビは、まさにこのアカデミー出身者であり、ベナイヘス氏の教え子。また、現在FC東京で活躍する弱冠17歳の久保建英も、同アカデミーの出身者であり、ベナイヘス氏が指導していた時期に在籍していたため、ベナイヘス氏のイズムを受け継いだ一人ではないかと想像される。

そんな輝かしい功績をバルサで作り上げたベナイヘス氏。バルサ退団後は、世界のクラブからのオファーを受けるかたちで、世界各国を歴訪。あの「神の手」で有名なディエゴ・マラドーナ氏が当時指揮を取っていたドバイのクラブ『アル・ワスルFC(Al-Wasl F.C.)』や、故郷メキシコのクラブ『クルブ・デポルティーボ・グアダラハラ、通称チバス(Club Deportivo Guadalajara, Chivas)』、そして2015〜2018年にはここ、ドミニカ共和国のクラブ『シバオFC(Cibao FC)』で指導することとなる。

ベナイヘス氏はやはりすごかった。サッカー後進国であるドミニカ共和国に、ドミニカサッカー界史上初の国際的タイトルをもたらしたのだ。カリブ海地域の12カ国から21のクラブが参加する2017カリビアン・クラブ・チャンピオンシップで、彼が指導するシバオFCが輝かしい優勝を飾ったのだ。失礼な言い方だが、数々のインタビュー映像から感じるのは、一見、どこにでもいる心優しい温厚なおじいさん。しかし、その容姿とは裏腹に、コメント一つ一つに、知性や選手を信じる心、試合への秘めたる闘志の熱さを感じる。別のスポーツであり実在しない人物だが、バスケットボール漫画の金字塔『スラムダンク』の安西先生を彷彿とさせる。

そんなベナイヘス氏だが、ドミニカ共和国で指導していた頃、イニエスタ本人から連絡が入る。ヴィッセル神戸を通して、日本のサッカー界を盛り上げるためのプロジェクトに協力してくれないかと。イニエスタが、J1のフィールドで世界レベルのプレーを体現し選手達に直接刺激を与える。ベナイヘス氏が、ユースの選手達を指導し次世代を担う世界レベルの日本人選手を育てるというものだ。12歳のイニエスタを見出し、ユース時代は実家が遠い場所にある彼のために自宅に泊まらせてあげることも少なくなかったというベナイヘス氏。2012年のイニエスタの結婚式にも招待され、プライベートでは父子のような絆で繋がれている二人。そんな教え子であり息子でもあるイニエスタからのこのオファーを受けるかたちで、来日を決めたベナイヘス氏。これからの日本サッカー界が新時代に突入する音が聞こえるのは筆者だけだろうか。

2018年後半からは日本のサッカー界の成長を支えることとなったベナイヘス氏だが、その任務を終えたら、またドミニカ共和国のサッカー界に戻ってきてほしいものだ。彼の輝かしい指導者人生の中で最初にして最大の功績をあげたクラブ、FCバルセロナ。そのファンの呼び名である「アスール・グラーナ(Azul Grana)」は、バルサのユニフォームのカラーである青と深紅を表す。ドミニカ共和国の国旗の色も、奇しくも青と赤で近しいものがある。日本とドミニカ共和国で、サッカー界の安西先生とも言えるベナイヘス氏の益々の活躍が期待される。

 

ドミニカ共和国のサッカー事情は、FutbolDomincano.Netが詳しい。スペイン語のサイトだが、レアル・マドリードで活躍中のマリアーノ・ディアス他、ドミニカ共和国出身選手らの写真も豊富に掲載されている。是非ご覧いただきたい。

その他、ドミニカ共和国のサッカーに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームから。

▼ドミニカ共和国のサッカー専門ニュースサイト

FutbolDominicano.Net:https://futboldominicano.net/

 

▼アルベルト・ベナイヘス氏が指導した歴代クラブ

ヴィッセル神戸:https://www.vissel-kobe.co.jp/

Cibao FC:https://www.cibaofc.com/

Club Deportivo Guadalajara (Chivas):https://www.chivasdecorazon.com.mx/

Al-Wasl F.C.:http://eng.emiratesclub.ae/club/al-wasl/

FC Barcelona:https://www.fcbarcelona.com/

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